序章

わたしたちは今、社会のかたちを根本から捉え直さなければならない時代に生きている。政治的分断、経済的不安、文化的漂流がもたらすのは、単なる混乱ではなく、「どこに帰属しているのか」という感覚そのものの喪失である。

本書は、この現代的危機に対する一つの応答として、「トポロジカル社会学」という新たな視座を提案する。数学的位相幾何学の概念を援用しながら、従来の境界線に基づく社会分析を超え、より柔軟で可逆的な関係性を描く枠組みへと社会理論を拡張することを目指す。

また、ラカンの精神分析におけるトポロジーの応用と、ラカンサルヴァティズムと名付けた保守主義の再構成を交差させることで、「開かれた保守主義」「結集する自由」という矛盾的構造を抱えた共同体の可能性を探求していく。

これは単なる学術的思弁ではなく、社会運動や制度設計への具体的関与を志向する試みである。トポロジカルソサエティは、未来の共同体の形象であり、同時にすでにここに潜在する構造でもある。

あなたの目の前の社会が、閉じた空間ではなく、ねじれ、重なり、繋がり続ける「帯」のようなものとして立ち上がってくることを願って――。